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お化けは「境界」に集まる!?妖怪を本気で考えてみた!『妖怪の民俗学』

 

妖怪の民俗学 (ちくま学芸文庫)

妖怪の民俗学 (ちくま学芸文庫)

 

  こんばんは。

今年も気づけばはや8月に突入してしまいました。毎日が本当に暑くて暑くてつらいです……。

 とはいっても季節に文句言っても仕方がないのですが。

 

さて今回、第一冊目の記念すべき私が紹介するのはこの本。

宮田登さんの『妖怪の民俗学です。

 

暑い日を乗り越える、ほんの涼しさを求めて手にした本(大嘘w)ですが、どうやら怖い話の本ではなく、大真面目に「妖怪」について考えた本でした。

私は昔からこういう怪しいジャンルが大好きでして、「新耳袋」や常光さんの「学校の怪談シリーズ」を見て大きくなったといっても過言ではありません。

 また、この時期はテレビでも(昔よりはだいぶ数は減りましたが)心霊動画や「本当にあった怖い話」などがあれば毎回必ずテレビを見ます。

 

 とはいっても怖いのは大の苦手なのですが……。それでも怖いもの見たさがあるでしょうw

 

 

 その「妖怪」について、この本では妖怪(民俗)研究で有名な「柳田国男」先生や「井上円了」先生の考えを巧みに縦横し、その上で現代の学者「小松和彦」先生にも少しですが触れています。

 

まずは『なぜ妖怪を考えるのか?』から柳田国男(以下敬称略) の『妖怪談義』を引用し、人間の本能の原点「恐怖」こそが妖怪の正体そのものであり、その上で「妖怪」と「幽霊」の違いを述べていきます。

 

 私はこれまで「妖怪」と「幽霊」の違いなんて今まで考えたことがありませんでしたが、柳田国男はそれぞれ登場する「時間」、「場所」に注目し明確に分けました。

 

「妖怪」は夕方と夜の境目「黄昏(たそがれ)時」に明確な場所(川など)に存在するのに対し、「幽霊」は時刻は「丑三つ時(午前2時半ぐらい)」に場所を問わず、「対象の人のもと」に現れると考えました。

 

 しかし作者はこれに、「山姥」や「姑獲鳥」の話を持ち出し、「幽霊」とされているものも簡略化すれば「妖怪」ともいえるとし明確するのに何か違和感を持っています。

 

次に「自然」と「人間」との関わりから、私たちが文明を発展させるために「自然」を切り開いてきた「贖罪(つまり罪悪感のような)」から自然への恐怖心を常に抱いていました。

それが形だって古くは「江戸時代」に地震がある時は「鯰(なまず)男」と呼ばれた怪物が海から現れ町を壊すと恐れられ、近代でも日本の高度成長期における公害問題の時はそのゴミから「ゴジラ」が現れ人々は恐怖に慄きました。

 

 これを作者は後に「妖怪の再生産」と呼んでいます。

時代によって「妖怪」は姿形、登場場所などは変われども、私たちに投げかけてくる「メッセージ性」までは変わらないということです。

 

 「ゴジラ」以外にも都市伝説口裂け女はかつての「山姥」や「姑獲鳥」の話の再生産だと作者は考えています。村社会や自宅出産が身近ではなくなりましたが、「妖怪」は現代に合わせて登場機会を常に待っているのです。

 

 そして話は「境界」についての話に移ります。

 「妖怪」は様々な「境界」に存在するものだと言います。

 

確かに世に聞く多くの怪談や都市伝説は、トンネルや橋の上、トイレなど様々な繋ぐもの「境界」に存在しています。

 そう我々日本人は常日頃から「境界」を意識しているのです。

例えばアメリカとは違う、外から家に入るさいは靴を脱ぐという行為です。

または「部屋の敷居を踏むな」と怒られた方もおるやもしれず、これも「境界」です。

 

 しかしここから作者は何でもかんでも「境界」だから起きたことだと述べていきます。

これは少し頭をひねります。「空間論的に見れば境界にあたる…」とまるで後付けにしか見えない物言いで残念です。

 ですが、「盆踊り」や「かごめかごめ」など凄いと思うことも多く「境界」については、他の民俗学者ともまだ考えていきたいと思います。

 

 そして最後に 柳田国男 の「妹の力」の本を挙げ、この本のなかで作者が引用している伝承にはどこかに必ず「若い女」の人がいて、彼女が「怪異」に深くかかわっていると述べます。 

 これは作者の意見よりも井上円了のストレスがたまった女性の悪戯説のほうが有効だと思いました。

 

この意見を見て、作者の立ち位置がわからなくなりました。作者は巫女の力や潜在能力を根拠もなく信じているのではないですか。

 

最後に私の読み間違えなのかな?なんて思ったりもします。

 

まとめ 

 

1冊目をなんとか終わりました。

民俗学」はたしかに面白いのですが、引用された昔の口承や伝承も多く、それもよく似ていて、読んでいてだんだんと疲れます。

 

 私はこういった学術書を読むときは、一字一字逐語読みをするのですが、口承部分は飛ばし読みをしていったので、いまいちわかっていません。

 

 それでも「妖怪」や「民俗学」にはキーワードとして「境界」というものが必ずあることが分かっただけでもこの本を読んで正解だったと思います。

 

最後に、私としての贖罪なのですが、このブログで私がまとめたことはほとんど全て解説として「常光徹」さんが解りやすく簡潔にまとめてくださっていて、私とほとんど同じですので、この本は解説だけ読むのでもいいかと思います(失礼ですが…)。

 

いや~、でも学術書は時として本文よりも解説の方が価値あるなんてありますしね!小説はだめですが。

 

これからも「オカルト」や「妖怪」には挑んでいきます。

また「科学哲学」もこれらと密接にかかわっていると思いますので、ぜひ期待してください。

 

ありがとうございました。

 

最後にこれから読む本やこの記事に登場した関連本の載せて終わりとします。

 

妖怪談義 (講談社学術文庫)

妖怪談義 (講談社学術文庫)

 

 

 

妹の力 (角川ソフィア文庫)

妹の力 (角川ソフィア文庫)

 

 

 

境界の発生 (講談社学術文庫)

境界の発生 (講談社学術文庫)